こえとくらし発達・福祉と、家族の毎日を考えるメディア
大阪市・堺市から
記事一覧へ

親と離れて暮らす日にも、自分の部屋を。障害者施設の「個室化」が問うもの

10月22日の国の検討資料から考える、成人した子どもの住まい。「入れる場所」の先にある、本人の時間と選択の話。

公開 2026.10.23 / 情報確認 2026-10-23

青い扉を開くと自分の好きなものが見える、切り紙風の住まいのイラスト

架空のイメージです。実在の人物・施設・場面とは関係ありません。

自分が今のように世話をできなくなったら、子どもはどこで暮らすのだろう。住まいを探し始めると、対象になるか、空きがあるか、費用を払えるかが気になります。その一方で、食事のあと一人で音楽を聴きたい、好きな物を手元に置きたいという本人の暮らしも、そこには続いていきます。

2026年10月22日、厚生労働省の報酬改定検討チームが、障害者支援施設の個室化などを議題にしました。資料を読むと、問われているのは部屋の形だけではありません。支援を受けながら、自分の過ごし方をどこまで選べるか。将来の住まいを探すときの、見方にも関わってきます。

この記事の目次
  1. 「個室にする」という話が、支援の報酬につながる理由
  2. 一人の時間を選べるか。部屋と一緒に確かめたいこと
  3. 住む場所と昼間に通う場所を、分けて考えてみる
  4. 大阪市で考え始めるなら、「まず体験できるか」から
  5. 出典・参考資料

「個室にする」という話が、支援の報酬につながる理由

障害者支援施設は、主に夜間の介護や生活の支援と、昼間の生活介護などを提供する社会福祉施設です。発達障害の診断があれば誰でも入所できる、という制度ではありません。ここでは、日常生活に継続した支援を必要とする成人の住まいを考えます。施設の役割は2025年の検討会資料で確認できます。

10月22日の資料は、現在の施設入所支援の報酬では、居室の形による評価をしていないと説明しています。個室・ユニット化では管理や支援の業務量が増えるため、その違いを報酬で評価することが検討の方向性として示されました。ユニットとは、居室と共同生活の空間を小さな生活単位としてまとめる考え方です。第66回資料・印字8ページ

ここでいう報酬は、支援を提供する事業者に支払われる公的なサービス費の仕組みです。本人や家族へ個室の改修費を配るという話ではありません。また、2027年度改定に向けた検討であり、個室の一律整備や利用者負担が決まったわけでもありません。

一人の時間を選べるか。部屋と一緒に確かめたいこと

個室を望ましいとする方向は、昨日突然出てきたものではありません。2025年9月24日の「これまでの議論のまとめ」概要では、本人の意思・希望の尊重と、個室化や住まいと日中活動の場の分離が、ともに位置づけられていました。住環境の話と意思決定の話が、同じ文書に並んでいるのです。

たとえば、音が重なると疲れる人にとって、一人で過ごせる空間は生活の大切な条件になりえます。ただ、部屋が一人用でも、休む時間や持ち物をすべて周囲が決めていたら、本人の選べることは増えていないかもしれません。

部屋の広さや人数と一緒に、「その部屋で本人が何を決められるか」を見る。そう考えると、個室化は設備の比較から、支援の中身を確かめる入口へ変わります。もちろん、個室で過ごす時間が長ければよいということでもありません。本人が望む交流と、必要な見守りが両立するかも大事です。

住む場所と昼間に通う場所を、分けて考えてみる

今回の資料では、施設の敷地外にある日中活動の事業所を利用する際の、情報共有などへの評価も検討されています。第66回資料・印字15ページ。同じ敷地で生活が完結する形に加え、昼間は外の活動へ出て、夕方に住まいへ帰る形を支える議論です。

住まいと日中活動を分けると、移動と引継ぎが必要になる
暮らす場所夜の休息・自分の持ち物
朝 →移動の支援
体調・伝え方の共有
← 夕方
昼間に通う場所本人が選ぶ活動・人との接点
公表資料をもとに編集部作成。制度上の利用可否・送迎の有無を示す図ではありません。外へ出る選択を成り立たせるには、場所を用意する以外の支援も要ります。

外へ出れば自動的によくなる、とは言えません。移動で疲れないか、慣れた伝え方が通じるか、体調が崩れたら誰に連絡するか。選択肢を増やすには、その間をつなぐ支援が必要です。図の往復の部分を、住まいの職員と通う先の職員がどう支えるのか。そこまで聞いて初めて、一日の暮らしを想像できます。

大阪市で考え始めるなら、「まず体験できるか」から

いきなり入所先を一つに決められなくても、暮らしを体験する機会を探すことはできます。大阪市の地域生活支援拠点等の案内(10月15日更新)は、親と同居する障がい者の一人暮らし体験などを、市の取り組みとして紹介しています。各区の障がい者基幹相談支援センターは、本人や家族からの相談に応じる窓口です。

すでに施設や病院で暮らしていて、地域の住まいを考える人には、対象者の要件がある地域移行支援もあります。住居確保の相談や体験的な宿泊などを支える制度で、親と同居する人が誰でも同じように使える制度とは分けて考える必要があります。

相談では、たとえば「一人で落ち着く時間は必要だが、夜の服薬には手助けがいる。どんな体験から始められるか」と、本人の望む時間と必要な支援を一緒に伝えてみる。実際のサービス利用には支給決定や契約が必要になり、費用負担が生じる場合もあります。登録事業所でも空きがなければ希望に応じられないことは、市の案内にも明記されています。

国の議論だけで、近所の住まいが来年変わるとはまだ言えません。それでも、将来の相談に「空きはありますか」と「本人はそこでどんな一日を送れますか」の両方を持っていくことは、今からできます。

次に読む

卒業後はB型、と勧められたら。本人に合う進路を決める前に確かめたいこと
住まいと昼間の過ごし方を分けて考えたら、次は本人に合う日中の活動を考えるために。

子どもが相談に行かない。親の体力も限界に近いとき、堺市で話せること
堺市で親自身の体力や将来の不安を相談したいときの入口を知るために。

出典・参考資料