中学校、ほかの子はどうだった? 進学前後の研究と、先輩家庭の準備から
学校は好き。でも親から見ると心配な変化がある。追跡研究に見えた違いと、先輩家庭が助かった準備・やっておけばよかったこと。
公開 2026.10.24 / 情報確認 2026-10-24

架空のイメージです。実在の人物・施設・場面とは関係ありません。
中学校では、勉強についていけるだろうか。教科ごとに先生が変わっても、困ったことを伝えられるだろうか。進学を考えると、まだ起きていない出来事まで心配になります。そんなとき知りたくなるのが、「ほかの子は、行ってみてどうだったのだろう」ということです。
進学を追った研究を読むと、心配がそのまま現実になる子ばかりではありません。でも、「平均では悪化していない」だけで安心できる話でもない。学校が好きという本人の回答と、心配な変化があったという親の回答が、同じ研究に並んでいました。海外の追跡研究と、日本の保護者が公開した経験から、その違いをたどります。
この記事の目次
「中学に入ったら不安が増える」とは、限らなかった
2024年にオンライン公表されたSideropoulosらの研究は、英国の61組の親子を進学前後に調べました。自閉スペクトラム症の子ども25人、ダウン症の子ども21人、ウィリアムズ症候群の子ども15人が参加。保護者の質問紙と、子ども本人へのオンラインでの聞き取りなどを組み合わせています。データは2018〜2019年、小学校の最終学年と進学後に集められました。
保護者が評価した不安の得点には、全体として進学前後の有意な変化はありませんでした。自閉スペクトラム症の群の平均は30.3から29.3へ。これは「進学で不安がなくなった」という結果ではなく、群の平均に明確な増加が見つからなかったという結果です。人ごとの変化は、論文の図1では上下する細い線として描かれています。
平均の線だけを追うと、その子が良くなったのか、苦しくなったのかを見失います。さらに、進学前から不安があれば、前後の点数が同じでも、負担は続いています。「中学になったから発生した困りごと」と「小学校から持ち越した困りごと」は、分けて見たほうがよさそうです。
学校は好き。でも、親から見ると心配な変化がある
同じ論文の表5で目を引くのは、自閉スペクトラム症の子どもたちの回答です。「新しい学校が好き」に「はい」と答えたのは19人。一方、保護者では、進学後に子どもに否定的な変化があったと回答した人が15人いました。
この二つを並べて「親は心配しすぎ」と結論づけることはできません。本人への問いは学校への好意、親への問いは進学後の変化で、同じものを測っていないからです。学校は好きでも、毎日の疲れ方が変わることはありえます。図は、そうした読み方が必要だと教えてくれます。
本人が「楽しい」と答えたら、それを家でのしんどさを打ち消す材料にしない。逆に、家で疲れているから学校には良いことが一つもない、とも決めない。「何がよかった?」と「どこで疲れた?」を別々に聞ける余地が、親子の間にあってよいのだと思います。これは研究結果を家庭で考えるための、編集部からの提案です。
ほかの研究では、どんな変化があった?
英国の通常の学校へ進む自閉スペクトラム症の子ども28人を追ったMandyらの研究(2015年先行公開、2016年巻号掲載)でも、進学後1学期を経た時点で、親・先生・本人が報告する心理的な問題の全体的な増加は見られませんでした。保護者が報告したいじめ被害は減る一方、先生が評価する生活上の適応、特にコミュニケーションには低下がありました。
ただし、親と先生・本人は、項目や尺度がすべて同じではありません。小学校と中学校では報告する先生も異なります。低下をそのまま「本人の能力が落ちた」とは読めず、新しい場面で求められることや、観察する人の違いも考える必要があります。
対照的に、英国の一地域で15人の子どもと保護者・先生に進学前後の聞き取りをしたMakinらの研究(2017年)は、全体として否定的な移行経験を報告しています。保護者の3分の1は進学先をめぐる行政への異議申立てを経験しており、その長期化で見学が遅れたり、できなかったりしたことが語られました。どの子にも同じ変化が起こるとは言えず、学校や支援のつながり方まで見る必要があるのです。
この話題を調べる入口になった11研究を扱うレビューの要旨も、精神的健康への影響について一様な結論には至っていません。ここではレビューの未確認の細部を広げず、本文を確認できた個別研究を読みました。いずれも日本の全児童を代表する調査ではなく、今回の結果から「うちの子がどうなるか」を確率で出すことはできません。
先輩家庭が助かったのは、「中学の一日」が具体的に分かったこと
研究の平均から少し離れて、日本の家庭の記録も見てみます。LITALICO発達ナビが2024年12月15日に掲載した、まつさんの中学進学の体験談では、事前見学や面談で、授業・部活動・試験、着替えの際の対応まで聞けたことが安心につながったと説明されています。
苦手な板書や書き取りへの配慮、デジタル教材の活用も紹介されています。電車通学に向けては、事前に駅でリハーサルを重ねたそうです。ここで参考になるのは「一人で電車に乗れた」という到達点だけではありません。学校での負担を調整することと、本人が試してみることを、同時に準備していたところです。
「やってみて、もし困ったらすぐ相談してください。」
まつさんの体験談に記された校長の言葉の一部/LITALICO発達ナビ、2024年12月15日
この家庭では小中の連携や学校のフォローが手厚かった、という条件もあります。同じ配慮がどの学校でも受けられるという案内ではありません。それでも、入学までに苦手を全部なくすのではなく、入学後に変えられることを学校と話しておく、という視点は持ち帰れます。
「やっておけばよかった」は、制服のような小さなことにもある
一方、taekoさんが2026年6月2日に公開した入学式前後の体験談では、採寸以来の制服を当日の朝に着て、慣れないボタンや衣服に手間取った経験が描かれています。事前に少しずつ着ておけばよかったかもしれない、という保護者の振り返りです。
学校の大きさや勉強だけが、新しい負担ではないのですね。着る物、移動、長時間の式典など、普段の暮らしと違うことが同じ日に重なる。だから準備も「中学生らしくできるように」という一つの目標より、どの場面を試すと見通しがつくか、どの負担は学校側で調整できるか、と小さく分けられます。
二つの記録はいずれも、その保護者が振り返った一家庭の経験です。準備をすれば必ず順調になるという比較実験ではなく、休ませる・登校を促すといった判断の正解を示すものでもありません。
「どうだった?」の答えを、一つにまとめなくていい
ほかの子の進学後を調べて分かったのは、学校への好意、不安、毎日の適応が、一本の線では動かないことでした。「新しい学校が好き」は大事な答えです。同じくらい、「着替えで困った」「誰に聞くか分からなかった」も大事な答えです。
進学前には、小学校ですでに助かっている配慮を確認し、中学校で変わる一日の場面を本人と見てみる。進学後には、期待と違ったところを直せるようにしておく。「中学生になるんだから」の前に、その子が今見ている学校の話を、もう少し具体的に聞いてみたいと思います。
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出典・参考資料
- Sideropoulos et al., Anxiety during transition from primary to secondary schools in neurodivergent children。2024年8月13日オンライン公表、JCPP Advances 5(2)、2025年。方法、表3・5、図1、限界を参照。英国61組。本人と保護者の図は人数を使用し、異なる問いの割合を同一尺度として比較していません。
- Mandy et al., The transition from primary to secondary school in mainstream education for children with autism spectrum disorder。2015年1月9日先行公開、Autism 20(1)、2016年。方法・結果・考察。英国28人、学校報告の前後データは20人。小規模で対照群のない調査。
- Makin, Hill & Pellicano, The primary-to-secondary school transition for children on the autism spectrum: A multi-informant mixed-methods study(2017年)。要旨・方法・考察。英国一地域15人。支援の違いを含む個別性を考える資料として参照。
- Palikaraらのレビュー・プレプリントv2の要旨と版履歴(2026年1月8日)。研究発見の入口。原文全体は取得できておらず、本文未確認の詳細をこの記事の根拠にはしていません。
- LITALICO発達ナビ・まつさんをエピソード参考とする読者体験談(2024年12月15日)/taekoさんの入学式前後の体験談(2026年6月2日)。公開記録の紹介で、本サイトの独自取材ではありません。以上2026年10月24日確認。海外研究の結果を大阪市・堺市の進学結果として扱っていません。